ゴールド インベスター 2017 年 6 月

昨年の今頃は、EU 離脱の是非を問う英国の国民投票もまだ行われておらず、ドナルド・トランプ氏の米国大統領就任もまだ決まっておらず、流通紙幣の 86% を廃止するというインドのモディ首相による驚くべきプランもまだ発表されていませんでした。

ゴールドインベスター2016年10月

「ゴールド インベスター」秋号をご覧くださり、ありがとうございます。
2016年が終わりに近づきましたが、マクロ経済および政治におけるリスクは、かつて例を見ないほど高まっています。

ポートフォリオのリスク管理と金投資の役割

金には信用リスクが存在せず価値がゼロになることはなく、資産保全の中核をなす資産である。金の通貨性に着目すると、金は基軸通貨ドルと逆相関の関係にあり、通貨分散としての役割を担う事が可能である。伝統的資産と同程度の流動性を持ち、リーマンショック時においてもその流動性は保持された。また実物資産としての金は、インフレヘッジ機能が期待できる。金は債券や株式とは異なる新たなベータであり、通常時の分散効果に加え、テールリスク発生時においても、わずか数%の組み入れで、ポートフォリオ全体の損失抑制効果を発揮する可能性がある。
市場が複雑化し、世界経済が不安定化する中で、リスク管理の重要性はますます増している。ポートフォリオ運用に内在する様々なリスクを抑制する点において、金投資の意義を見出すことができるであろう。

金と米国の実質金利:その実態を検証

実質金利は、金価格の動きを把握する枠組みを構築するうえで重要なポイントである。しかし、それがいつ重要かを認識することが鍵となる。金と米国の実質金利の関係は時として理論上、実践上において投資需要を牽引する要因となるが、複数ある要因の…

日本の投資家からみた為替リスクと金投資の役割

五分位分析および相関分析により、ドルの主要通貨に対するリターン(円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、豪ドル、加ドル)と金価格のリターンは、分析期間およびそのサブ期間(金価格混乱期、金価格低迷期、金価格上昇期)すべてにおいて、逆の動きをすることを確認した。このことは、日本人投資家を含む世界の投資家にとり、金がドルのヘッジとして有効であることを示唆している。
また、日本の投資家を想定したシミュレーションにおいて、主要外貨だけを持つポートフォリオに金を5%加えることで、リスク・リターンが改善する結果を得た。通貨分散の手段としての金投資の効果を確認した。

日本の投資家にとってのテールリスクと金の役割

日本市場において過去発生したテールイベント時に、5%金をポートフォリオの中に組み入れて保有することで、ほぼ全てのテールイベントの期間で損失抑制効果が確認できた。為替ヘッジ(対ドル)を付けて金を保有する場合と、為替ヘッジせずに円ベースで保有する場合の2通りについて分析。
また、将来発生するかもしれないテールリスクのシナリオを3つ想定し、ある最適化ポートフォリオが被る損失を推計、金を組み入れることによる損失抑制効果についても試算。テールイベント時のヘッジツールとしての可能性を示唆する結果となった。